今回の〈今週のオススメ本〉は、少し前にも軽く触れたが、『スティーヴン・キング』の「デッド・ゾーン」。
自分がキングの中で一番好きなのがこの「デッド・ゾーン」で、個人的にはキングの中でも最高傑作だと思っている。
「高校教師で人気者のジョン・スミスは、恋人のセーラとともに幸せの絶頂だった。
ところがカーニバルの帰りに大事故にあり、4年半もの間、昏睡状態に陥る。
奇跡の回復を遂げたジョンは、望んでもいない能力を身につけてしまい、ここから彼の苦悩と悲劇が始まる。」
最初、人々はジョンが授かった力に感動し助けを求め、次第に恐怖し嫌悪される。
どんどん追い詰められ、孤独になっていくジョンが最後に見出す使命。
正直読みやすい文体ではないし、キングなので話がすぐに脱線したり、枝分かれもするので、乗ってくるのに少し時間もかかる。
ところがジョンが目覚めてからは、話に引き込まれ、切ないながらも読んでしまう。
前にも書いたが、物語に出てくる悪い大統領候補が、前のアメリカ大統領“ドナルド・トランプ”に似ているのも一興。
物語全編に漂う物悲しい雰囲気や、ジョンの苦悩など、読んでいて痛くなるが、けっして最後は暗い終わりではない。
哀しい物語なのだが、キングなので最終的には“救い”がある。
初期作品の再販を願う
キングはホラー作家だと思われがちだが、自分がキングを好きなのは、長い人間ドラマの中に少しだけ不思議なことがあるから。
特に初期の作品が好きなのだが、「ファイアスターター」や「クリスティーン」も、超常現象があるのだけど、根底にあるのは人間関係の話。
大作「IT」も全編ホラーで怖いのだが、真ん中にあるのは、主人公の子供たちの友情や苦悩。
短編「スタンド・バイ・ミー」を、大きく膨らませた話だと自分は思っている。
そしてこの「デッド・ゾーン」含め、キングの新潮文庫の初期作品が、いまだに新装で再販されていないので、いいかげん再販してくれないかな。
ただ最近「ファイアスターター」が、再映画化され今年公開らしく、「クリスティーン」も再映画化の噂があるので、文庫のほうの再販も期待できるかも。